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  • 「晋作!晋作は居るか!?」

    「晋作!晋作は居るか!?」

    「お?この声は。おるぞー!こっちやこっち!!」

    縁側で寝そべってだらけていた高杉はその状態のまんま自分を呼ぶ声の主を呼び寄せた。

    声の主が廊下の角を曲がり姿を現した所でようやく体を起こした。

    「お帰り〜桂さん。三田尻はどうやった?」 植髮

    起き上がって縁側から足を落としてぶらぶらさせる高杉に大股で近付いた桂は両肩を押さえつけて真顔を寄せた。

    「三津は何処だ。」

    「三津さんなら今九一と町に出ちょる。」

    「九一が生きてるのも事実か。」

    「おう生きちょる生きちょる。」

    「お前はいつから九一が生きてるのを知っていた!?」

    桂の怒鳴り声を聞いた伊藤が慌ててその場に駆けつけた。その後に赤禰に山縣,白石も何の騒ぎだとついて来た。

    「桂さん!いつお戻りに?お付きの者もつけないで……。」

    伊藤はとにかく落ち着いてくれと高杉から引き離した。桂は白石まで駆けつけたのに気付くといつものように優雅な所作で着物の乱れを直した。

    「今着いた所だ。付き人は遅いから置いて来た。今頃必死にここへ向かってるだろう。」

    『あーあ……可哀想……。』

    自分も以前はそちら側だったなと伊藤は遠い目をした。

    「じきに戻りますよ。そう遅くはならんでしょうからお茶でも飲みながら待ちましょう。」

    白石は桂を広間へ先導し,その後をぞろぞろ列を成してついて行った。

    桂が戻ったと聞いたセツはお茶を用意しその甘い顔を拝む為そのまま居座った。

    「で,三津はいつ来た?九一が生きてるのをいつ知った?」

    桂は正座で姿勢を正しているがそわそわが止まらない。左右に体を揺らして落ち着きがない。「二人が来たんは一昨日や。いきなり訪ねて来たそっちゃ。そこで初めて九一が生きとるのも知ったけぇ俺も報せの一つぐらい寄越せやって怒鳴ったそっちゃ。

    桂さんは何で二人が来たの知っちょるん。」

    「白石さんから伝言を預かった者が来てくれてね。」

    桂がそう言うと白石はどう?仕事出来る男でしょう?と言ってるような顔で胸を張ったので高杉は舌打ちをした。

    「んで仕事ほっぽって帰って来たそ?」

    「馬鹿言うな!ちゃんと済ませたわ!それより三津に変わった様子は無かったか?怪我をしてるとか体調が悪そうだとか……。」

    「元気やけぇ今九一と出掛けちょるそ。こっちは壬生狼おらんし海あるしで生き生きしちょるわ。九一の方はあの戦で随分体を傷めとる。腹に鉄砲玉の痕まである。

    あれから十月は経つのに体力も筋力も落ちたまんまじゃ。」

    それを聞いた桂は少し落ち着きを取り戻してそうかとだけ呟いた。

    「三津さんは前より小さくなった気がしたけ今沢山食わせちょる。何や九一とあの女中さん二人と生活しよったみたいやで。」

    女中さんと聞いて桂は安堵の笑みを浮かべた。

    「サヤさんとアヤメさんには私が頼んだんだ。やっぱり三津一人だと心配だからね。そうか……二人も一緒に居てくれてたか……。」

    「桂さん,あれは本当に入江の嫁ちゃんやなくて桂さんの嫁さんなん?」

    山縣の発言に桂の眉間にシワが刻まれた。

    「九一の嫁ちゃん?馬鹿言うな。三津は私のだ。三津は私に会いに来たと言ってなかったかい?」

    「言ってましたよ。桂さんに会いたくて来たと。

    ですが先に言わせていただきますと,桂さんが出石に潜伏し三津さんの元を離れてからここへ来るまでの間,入江さんと三津さんは寝食を共にして来た為以前よりだいぶ親密になってます。

    なってますが男女の仲にはなってません。

    ですが親密です。先に申し上げます。余計な嫉妬で三津さんを傷付けないようにお願いします。」

    山縣が余計な事を言うのは想定していた。伊藤はすかさず桂の前に出て捲し立てるように言葉を並べた。

    「親密とは……。」

    「九一さんと名前で呼ぶようになってます。」

    桂は肺にある空気を全て吐き出すぐらいの溜息をついた。それから目頭を押さえて天を仰いだ。

    「伊藤君他には?」

    問いかけつつお茶を口に含んで乾いた口内を潤した。

    「今相部屋です。」

    「は!?」

    口に含んだお茶が全て流れ出た。

  • 「私は大丈夫です。

    「私は大丈夫です。それより九一さんがこうなるの珍しいんですか?」

    「何で急に名前で呼ぶそ。」

    何の考えもなしに思ったことが口から出る高杉が話の腰を折る。

    「呼んでほしいって言われたんで……。それはいいから私の質問答えてくれません?」

    笑顔で凄まれて高杉は震えながらすまんと小声で謝った。瘦面botox

    「入江は高杉みたいな馬鹿な呑み方はせんからな。やけん昨日は珍しくよう喋るしよう呑むなとは思った。」

    「そうですか……。やっぱ抱え込むモノが大きいんですね……

    私の所に帰って来てから九一さんはどんなささやかな事でも幸せやって言ってくれて,私はその言葉に満たされてたのに,九一さんにとって幸せは罪悪感でもあったって事,さっき知ったんです。

    自分が幸せであるのを吉田さんと久坂さんに謝りはった。

    私,半年以上も傍にいてそんな事も気付いてあげられへんかった。」

    三津の涙がぽたぽたと落ちる。五人はかける言葉が見つからなかった。

    昨日の入江の言葉といい,今の三津の言葉といい,互いに満たされてたのは明白なのに当の本人達はそれに気付いていない。

    「お前ら不器用にも程があるやろ……。」

    高杉が呆然としながらようやく言葉にした。

    「何がですか?」

    「ちゃんと九一に伝えちゃれや。九一が言う幸せやにどれだけ救われたか言っちゃらんと九一は分かっとらんぞ?

    九一も馬鹿やけぇ三津さんを幸せに出来んのに自分だけ幸せになってもたって罪の意識持ちやがって。

    いいか?三津さんが九一に満たされとるって分かったら九一も幸せなんが罪やとは思わん。」

    「高杉さんて……ホンマたまにまともな事言いますよね……。」

    「たまにやから説得力あるやろが。」

    得意げに言う姿がおかしくて三津は思わず吹き出した。それを微笑ましく眺めていた赤禰がやれやれと言った顔で口を挟んだ。

    「入江寝たフリやめたら?」

    「え!?」

    三津は嘘だ!と膝の上の顔に目を落とした。それからぷにぷにと頬を突いた。

    「せっかくなんで寝てる事にしちょってくれてもいいやないですか武人さん。」

    入江は騙せたと思ったのにと口角を上げた。「お前ら不器用やけぇ今ここでお互いに幸せやって確認させとかんと拗らせそうやけんな。

    あっでも核心部分は桂さんにしか満たせんのやったか?」

    「武人さん意地悪。せめて体の相性分かれば私にも勝機あると思うんやけどなぁ。ねぇ三津さんそろそろ抱いて?」

    「阿呆!」

    にんまり笑って見上げてくる入江の額をペちんと叩いた。みんなの前で何言ってくれてんだ。

    「お前が抱くんやないんかい。」

    逆やろと言う高杉を入江は分かってないなと鼻で笑う。

    「三津さんには攻めの才能があるそっちゃ。」

    「勝手に変な才能見出さんとって。」

    真剣な声色でまっすぐにろくでもない事を言いやがった。三津は余計な事言わないでと入江の頬をつねり上げる。

    「三津さん私幸せです。」

    入江は満面の笑みで三津を見上げて三津の頬に手を添えた。その笑顔で今それを言うのは狡いじゃないか。

    「私も……幸せですよ?」

    その手に手を重ねて微笑み返した。

    「何やこの茶番は。相思相愛かいや。」

    「いいやないか高杉!女に興味がなかった入江が桂さんから嫁ちゃん略奪!めでたいやないか!」

    「山縣君,略奪はめでたくないよ?物騒だよ?絶対桂君黙ってないよ?」

    高杉,山縣,白石が口を開くと煩すぎる。入江は体を起こしてとりあえず高杉と山縣の頭を叩いておいた。白石は一応奇兵隊の資金援助者であるからここは堪えた。

    「相思相愛なん分かったとこでそろそろ出てってくれん?」

    入江は目の笑ってない笑顔で邪魔だ出てけと訴える。三津が今まで満たされて過ごしていたと知れて気分がいい。そのままの気分でいたいんだ。

  • 「アカンは駄目って意味で……。」

    「アカンは駄目って意味で……。」

    「有朋怖がらせんなや。それより空いてる部屋一つぐらい無かったか?」

    高杉が間に入って三津を庇った。

    「あー訓練に根を上げて逃げ出した奴が使っちょった部屋があったな。」

    「じゃあそこ掃除して二人で使い。いいやろ?」 iamjamay.wordpress.com

    高杉が振り返って三津と入江に確認した。

    「二人同室かいや。やっぱ夫婦やろ。」

    どうしても山縣は三津を桂の女と認めたくないのか入江の嫁にしたがった。

    「桂さんが帰って来たら分かるわ。面白いぐらいベタ惚れやけんな。」

    高杉は三津の事になると平常でいられない桂を思い出してニヤニヤしながらちらりと三津を見る。

    「あっあの私部屋を掃除してセツさんにここの仕事教えてもらうんで失礼します!」

    ここに居てもろくな事がなさそうだと判断した三津は逃げることにした。

    「そうだね,休める場所作らないとね。入江君は積もる話もあると思うから三津さんは私とセツさんに任せてここに居るといい。三津さん行こうか。」

    白石の助けもあって三津はこの場を脱出するのに成功した。さぁおいでと白石は肩を抱いて屋敷内に戻って行った。

    「さっきも思ったけど白石さん三津さんに引っ付きすぎなんよな。」

    伊藤がふんと鼻を鳴らして不機嫌に呟いた。

    「久しぶりに若い娘が来たけぇ浮かれちょるな。ここではどれだけの男が手玉に取られるか。」

    高杉は見物やなと笑った。

    「あの娘何者や?」

    山縣はあからさまに三津に不信感を抱いている。河上は面白そうな娘だねと興味津々だった。

    「じゃけん桂さんが溺愛しとる三津さんや。稔麿も惚れちょった。で,九一も結局落ちたんやろ?」

    「あぁ落ちたなぁ。」

    入江は遠ざかる三津の背中を見つめながらふっと笑みを溢した。

    三津はセツから適当な掃除道具を借りて姐さん被りに襷掛け,その上から吉田を背負うのを忘れずに装備して掃除に取り掛かった。

    四畳半程の狭い部屋でさほど時間はかからなかった。

    それからセツの元に戻って次の仕事を教えてもらった。

    夕餉の仕込みだ。今晩の夕餉のおかずになる芋をひたすら洗って皮を剥いてる間,セツは色々と話してくれた。

    おばちゃんとはお喋りな生き物だ。「ここはねぇ高杉さんや入江さんみたいに他の藩から長府に来た人らがおる場所で他の連中は訓練が終われば自分家に帰るけぇ。

    聞いた?奇兵隊の面々の本業。」

    三津はこくこく頷いた。奇兵隊の隊士の中にセツの旦那もいるらしい。セツには子供がいないから本業の畑仕事の傍らここの仕事も引き受けていると言う。

    「うちは子供に恵まれんかったけどねぇここで高杉さんやら若い衆見ちょったら息子みたいに思えてね,世話焼きたくなるそっちゃ。」

    なるほどセツはみんなの母親らしい。みんなが子供だと話すセツがとても楽しそうで,こんな母親に愛情を注いでもらってる奇兵隊の若い衆が羨ましく思えた。

    「そのお手伝い精一杯させていただきます!」

    「助かるわ〜。男連中に何かされたらすぐ言うんよ?引っ叩いちゃる。」

    セツは腕の力こぶを見せた。畑仕事で鍛えられた何とも頼もしい腕だった。三津もセツの真似をして腕に力を入れてみるも何とも貧相ですぐに現実から目を背けた。

    その晩の夕餉で三津は度肝を抜かれた。

    「めっちゃ凄い……。」

    奇兵隊の隊士達は恐ろしいぐらいよく食べた。おかわりおかわりと茶碗を差し出されお櫃のお米はあっという間になくなった。

    「体が資本だからね。食べて体力つけないと保たないんだ。」

    何故か白石もそれに混じって夕餉を食べていた。そして歳の割によく食べる。

    三津は入江が気になった。京では食が細り,食事も質素倹約を心掛けていたから確実にここの面子より胃が小さいはず。

  • 「白石さんの頼みなら断れませんけど

    「白石さんの頼みなら断れませんけど,桂様の大事な人に女中の仕事やらせていいそ?」

    セツは本当にいいの?と白石と入江を交互に見た。

    「大丈夫です。京の藩邸でも掃除洗濯炊事に針仕事,何でもやってくれてましたから。」

    「三津と申します。勝手の分からないうちはご迷惑おかけすると思いますがよろしくお願い致します。」

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    セツは三津の肩をバンバン叩いた。トキもそうだったがおばちゃんは何かと体を叩いてくる生き物だ。

    「奇兵隊のみんなにも紹介したらまた戻って来るからその後はよろしく頼みますね。では行きましょうか。」

    セツとの挨拶もそこそこに次は訓練中の奇兵隊の面々に会いに行った。

    訓練はもう終わったのか各々手拭いで体を拭いたり武器の手入れをしていた。

    「ちょっと緊張するなぁ。」

    ぼそりと呟いた入江はそっと三津の手を握った。三津もその手をきゅっと握り返した。それから二人,顔を見合わせて微笑みあった。

    「ねぇ君達本当に恋仲じゃないの?それって恋仲が醸し出す雰囲気じゃないの?無粋とは分かってるけどおじちゃん気になっちゃうよ?」

    白石に言われて二人は苦笑しながら手を離した。確かにと頬を掻いて少し距離を取った。

    「高杉くーん!」

    白石が声をかけて手を振るとそこに居た全員の視線が集まった。

    「え?」

    「あれ?」

    その場に居る男達がどよめいた。そこに立っているのは入江だよな?と確かめ合っている。

    「お前ら!九一が帰ってきたぞっ!喜べっ!」

    高杉の声に確信を持った全員がわぁっと入江に駆け寄ってきた。

    「藩邸の人らと全然違う。」

    奇兵隊と立派な名前だがそこに居るのは年齢層はばらばらで体格もあまり良いとは言えない男達。

    京の長州藩邸で見た藩士達とは風格が違う。

    「驚いた?奇兵隊はね高杉君が作った誰でも入れる隊なんだ。彼らは武士じゃなくて農民や漁師をしてる普通の町民なんだ。

    戦えれば誰でもいいって高杉君らしい考えだよね。」

    「確かに。」

    くすくす笑っているとその高杉と目が合った。こっちに来いと手招いている。みんなの視線も刺さるので小走りで駆け寄った。

    「何や入江,行方くらませて死んだと思わせて女作って帰ってきたんか。」

    日に焼けた体格のいい男がぐっと三津に顔を寄せて舐めるように全身を見た。

    「おい有朋,三津さんは桂さんの女やぞ。変な事したら首飛ぶぞ。みんなもよく聞け。こちらは三津さん,今日からここで女中してくれるけぇよろしく頼むわ。」

    「これが桂さんの?そりゃ嘘やろ。入江の嫁のがしっくりくるわ。」

    「三津さんこの失礼な男は山縣有朋で松下村塾の塾生です。無礼が気に入らなければ桂さんに斬ってもらって結構です。」

    「いえ流石にそれは……。不釣り合いは言われ慣れてますんで大丈夫です……。」

    三津は苦笑いで何度も大丈夫と呟いた。

    「えっ本当に桂さんの女なの?」

    「三津さんこれは河上弥一と言います。これも失礼な奴なんで気に入らなければ桂さんに斬ってもらって……。」

    「大丈夫!斬らなくて大丈夫!」

    三津はお構いなく!と入江の言葉に被せ気味に言い放った。

    「桂さんの手を汚させたくないなら私が……。」

    「アカン!それもアカン!」

    三津は刀を抜こうとした入江の腕にしがみついて必死に止めた。「見せつけんなや。やっぱり入江の嫁ちゃんやろ?な?んでアカンって何?どう言う意味?」

    山縣は物凄く三津に顔を寄せて話しかける。この距離じゃないと聞こえないほど耳が遠いのか?と言うぐらい近い。

  • 「わざわざ三津を不安にさせる嘘

    「わざわざ三津を不安にさせる嘘なんかつくか。」 「ごめん……。」 三津を真剣に想っている気持ちを茶化した事は謝った。 相手が桂だろうと渡したくはないと言う本気が伝わってきた。 「で,揉めてた原因は?」 その問いに二人の目は大きく見開かれた。 「それは三津が乃美さんからっ!」 気持ちいいぐらいに二人の声が重なった。 そこで吉田は思い出した。懐に忍ばせている三津へのお土産の存在を。 「忘れてた。俺も三津に渡す物があった。」 桂との言い争いもそっちのけで吉田は三津の元へと急いだ。 「……乃美さんが何したんです?」 吉田に三津との時間を少しでもと思い足止めする事にした。 さて三津はどこの部屋へ案内されたのやら。きっと声が聞こえてくるはずと廊下を歩いていたら台所の方へ向かう入江を見つけた。 【改善脫髮】四招避開活髮療程陷阱,正確生髮! - 「九一三津知らない?」 「やっぱり三津さんまだ居るの?帰ったと思ったのに声がしたから。」 「ちょっと事情が変わってね。アヤメさんと台所かな。」 入江を追い越し台所を覗くと膳の準備を手伝う後ろ姿を見つけた。 サヤとアヤメに挟まれて楽しそうにお喋りをしている。 こうして見ると普通の女子なんだなぁとしみじみ思う。 「三津。」 声をかけると笑顔で嬉しそうに寄って来る。それに自然と笑みが溢れる。 「これ。みんなで食べるといい。」 吉田はそう言って三津に手土産を渡したが, 「吉田さん,それはあきません。だってそれ三津さんの為に買いはったんでしょ?それなら三津さんが食べなあきません。」 まさかアヤメにそんな事言われるなんて思ってもみなかった吉田は驚いて口が開いたままになった。ちょっとした沈黙の後,吉田は声を上げて笑った。 「アヤメさんにそんな事言われるとは思わなかった。俺の気持ちを汲んでくれるんだねありがとう。って訳だから食べてよね。」 三津は困ったように笑って頷いた。 「こんなん聞いたら桂様やきもち妬きはるなぁ。」 サヤが悪戯っぽく笑い,さっきの光景を思い出したアヤメは嫌でもにやけた。 「あんな桂様初めて見ました。桂様はもっとやきもち妬いたらいいんです。 あの子供じみた感じの桂様が可愛いんで私がもっと見たいだけなんですけど。」 「くっ……はっはははは!!!子供じみてるか……。確かに三津の事となれば必死だからね。それが可愛いのか,そうか。 じゃあアヤメさんの期待に応えて妬かせてみせようか。ねぇ三津。」 吉田は三津の頬に手のひらで触れ,さっき桂が道端でしていた様に親指の腹で下唇をなぞると猫を撫でるかの様に顎の下を擦った。 「むっ!無理無理無理無理!後が怖い後が怖い後が怖いぃぃぃ!!!」 三津は体を震わせ激しく首を横に振った。全然目の笑ってない笑顔で迫ってくる桂が目に浮かんだ。 「何?桂さんのお仕置きそんなに激しいの?俺は優しくしてあげるよ?」 「違うっ!そう言う問題でも無いっ!優しい方が好きだけど違う!そうじゃないっ!」 顔を真っ赤にして狼狽えていると外から豪快な笑い声がした。 「あっははははっ!駄目もう無理っ……!くっくくく……。」 外を覗けば膝から崩れ落ちて四つん這いで笑っている入江と,その横で突っ立って苦笑する桂の姿があった。 「か……桂さん……三津っ三津さんは優しい方が好きらしいので……次は手か……手加減してあげ……くっ……くはははははっ!」 入江は腹を抱えながら何とか壁伝いに立ちたがった。 「君達ねぇ……。一体誰をおちょくってるんだろうね?稔麿,九一後で私の部屋に来なさい。勿論三津もだよ。」 三津はまた説教だと戦々恐々だったがこの男の発想は違った。 「桂さんから夕餉のお誘いとは思ってもみなかった。喜んでご一緒させていただきますよ。サヤさんアヤメさん私と九一の分は桂さんの部屋にお願いするよ。」 とんでもなく自分の都合の良いように捉えてにんまりと笑ってみせた。

  • 「おっ!女同士の秘密です!」

    「おっ!女同士の秘密です!」

    これ以上の事をされては身が保たないが女同士だから出来た話であって,それをほいほい話したくもない。

    「分かったよ。でも帰ったら覚えときなさい。」

    桂は口角を上げて腕からするりと解放した。

    「何だもうちょっと続けてくれても良かったのに。」 iamjamay.wordpress.com/

    残念だと言いながら入江が障子を開けた。

    「開ける前に一言声をかけなさい。」

    恥ずかしい所を見られたと桂は苦笑し三津は顔も向けられないと入江に背を向け項垂れた。

    「三津さん忘れ物ですよ。大福。」

    入江はずかずか中に踏み込んで三津の前に屈み包を差し出した。

    「あ!ホンマや!ありがとうございます!」

    すぐさま受け取りお礼をした。こんな大事な物を忘れるとは。

    「では邪魔者は消えますね。ごゆっくり。」

    にんまりと笑って二人を見て部屋を出た。

    三津が側を離れるとつまらんなと思いながら廊下を歩いていると視線の先にアヤメを見つけた。

    入江に気付いたアヤメはその場で立ち止まり俯き加減で入江が通り過ぎるのを待っていた。

    アヤメの手には湯呑みが二つ乗ったお盆。あの二人の所へ行くのかと横を通り過ぎようとして足を止めた。

    「アヤメさんが淹れてくれるお茶は美味しい。いつもありがとう。」

    それだけを言い残して通り過ぎた。

    突然の事で驚き固まってしまったがアヤメは振り返って,

    「ありがとうございます!」

    声を上ずらせながら頭を下げた。それから急いで桂の部屋へ向かった。

    「失礼致します!お茶をお持ちしました!」

    嬉しさのあまり桂の返答を聞く前に障子を開け放った。

    「三津さん!一言声をかけていただけました!お茶美味しいいつもありがとうって!」

    「やったぁ!アヤメさん良かったです!」

    体で喜びを表現したいアヤメはお盆を桂の前に置くと三津の手を取り上下にぶんぶん振った。

    二人は桂そっちのけできゃっきゃと喜んだ。「私これでしばらく幸せに浸れます!それでは失礼しました!」

    アヤメは満面の笑みで部屋を出た。三津も私も幸せだと顔を綻ばせる。

    「何の話か全く分からないけど楽しそうで安心した。それで大福はいつ食べるの?」

    文机に頬杖をついて三津の傍らにある包を指差した。

    「あ!今いただいてもいいですか……?」

    桂はどうぞと三津が包みを開けるのを眺めた。

    中から現れた大福に三津は目を細めた。それを一つ大事に手に取り,いただきますとゆっくり口に運んだ。

    「やっぱり美味しい……。」

    幸せそうな表情に桂も頬が緩む。

    「九一の所で何してるの?可愛い小姓さん。」

    「んっ!縫い物してました。そうや途中で置いてきちゃった。」

    慌てて大福を飲み込んで中途半端にしてしまった着物を思い出した。

    「あぁすまないゆっくり食べなさい。私もまだやる事が残ってるからその間にまた九一の所へ行ってくるといい。」

    「ゆっくり食べたらその分小五郎さんとも長く一緒に居られますね。」

    『全くこの子は……。』

    今すぐ手を伸ばして抱きしめたいけどそうしたら歯止めがかからなくなってしまう。

    『本当に帰ったら覚えときなさい。

    あぁ……今触りたい……。』

    手の届く距離に居るのに触れられないのがもどかしくて手を袖の中に引っ込めた。

    そうこう葛藤しているうちに三津は大福を食べ終えて顔の前で手を合わせていた。

    「ご馳走様でした。じゃあ戻りますね。」

    「仕事が終わったら迎えに行く。」

    「待ってます。」

    三津はひらひら手を振ると部屋を出た。

    小走りで遠ざかって行く足音を聞いて桂は小さな溜息をついた。

    「失礼しまーす。」

    少しだけ障子を開けて中を覗くと入江は胡座をかいて本を読んでいた。

    「もう帰って来たんですか?もう少しゆっくりしてきたら良かったのに。」

    本を閉じておいでおいでと手招いた。

    「小五郎さんのお仕事の邪魔になっちゃうんで。それに縫い物途中やし。」

    中に入って縫い物をしていた位置に戻った。

    「さっきの三津さんは素早い身のこなしで逃げましたからね。」

    入江の妖し気な笑みに自分が何故この部屋を飛び出したか思い出した三津は顔を引き攣らせながら硬直した。

  • 『やっぱり申し訳ないと思ってはるんかな。』

    『やっぱり申し訳ないと思ってはるんかな。』

    攘夷や黒船やと出されても正直いまいちピンとこないし,久坂と桂でも攘夷に対しての意見が少し違うのかな?と思ったくらい。

    多分明日になったら何の話だったか忘れてると思う。それぐらい危機感がないから申し訳ないと思わせてる事が申し訳ない。

    「申し訳ないなんて思わないでくださいよ?厳しい立場にあるならより小五郎さんの近くに居られて良かったです。

    離れた所で訳も分からずいる方が私には無理です。植髮

    理解出来る頭は持ち合わせてません。でも何が起きてるか知る事は出来ます。

    知る事が出来て私は嬉しいので申し訳ないなんて……そんな風には思わないでください。」

    桂の腕を掴んで真っ直ぐに目を見て伝えた。三津の目に映る桂は穏やかな目で笑った。それから唇を奪いに来た。

    「続きを話すのはまた今度でいいかい?」

    そう言ってまた唇を重ねた。お酒の味とほのかな香り。それだけで酔ってしまう。

    三津が小さく頷いたのを見て今度は深い口付けを。

    畳に押し倒して三津の上に跨った。

    「本当はこれで良かったのかまだ悩んでいる。

    三津は甘味屋に居て笑ってる方が良かったのではと。この先私について来た事をずっと後悔させてしまうんじゃないかと思うと不安になる。」

    「後悔は……するかもしれませんし,しないかもしれません。

    でもそれは小五郎さんについて来なかったとしても同じです。

    やっぱりついて行けば良かったって後悔するかもしれへん。

    だから最期に幸せやって思えたら今までの間違いも後悔も許せると思います。」

    ……そうだね。最期に幸せな生涯だと共に思えるように生きよう。」

    そう言って桂は覆い被さったそして耳元で囁く。

    「だから三津も死のうとするんじゃないよ。簡単に命を差し出すんじゃない。彼の後を追うんじゃない。」

    『あ……。』

    酔いが一気に覚めるくらいに瞬時にあの日を思い出した。

    新ちゃんじゃないと駄目だなんて吐き捨てたあの日。そして刺客にどうぞと簡単に首を差し出したあの日。

    「あの時はごめんなさい……。一番言ったらアカン事言いました……。」

    「全くだよ。帰って号泣した。」

    「え!?」

    「嘘だよ。泣きたくはなったけどね。」桂はくすくす笑いながら頬をすり寄せて甘えた素振りを見せる。

    「小五郎さんって案外子供みたいな所ありますよね。」

    「大人のふりした大童だよ。男はみんなそうだ。子供じみた大人は嫌いかい?」

    「いえ?そんな事ないですよ。」

    どちらかと言えば,

    『可愛い……。』

    大の大人,しかも自分より年上の殿方にそんな事は言えないが,

    『何やろな私が甘えたでいつも甘える側やったから変な感じがするけど……。』

    こんな可愛い姿を見られるのならいくらでも甘えて欲しい。

    でもこの姿は酒のせいだろうか?だとしたら酒を呑んで他の女の人の前でもこの姿を晒して誑かしていたのでは……

    「今の小五郎さんは私の前だけに現れる小五郎さん?」

    「そうだよ?三津だから甘えられる。」

    それを聞いてあぁ良かったと嬉しさを噛み締めていると,

    「三津ごめんもう無理。」

    何とも良い手際で着物を脱がしてくれるじゃないか。

    『こっちの方は全っ然子供じゃないっ!』

    翌朝の桂は清々しい顔で藩邸に姿を表した。

    「今日はあの小娘どうした。」

    その清々しい顔が気に入らんと言わんばかりに乃美が食ってかかった。

    「今日は家に居ますよ。昨日は藩邸までの道を教えていただけで。」

    「匿うにしてもアイツの素性が分からんうちは認めんぞ。連れて来い。」

    ふんと鼻を鳴らしてその場を立ち去った。

    「何あれめっちゃ三津に会いたがってるじゃないですか乃美さん。三津が口説くから。」

    「やめなさい稔麿。三津は天然の人たらしなだけだ。」

    にやにやしながら現れた吉田はどうするの?と桂を見上げる。

    「三津には悪いが一度乃美さんと話してもらう必要があるね。」

    「じゃあ迎えに行きますよ。」

    それではと踵を返す吉田の肩を掴んで捕まえた。

    「あんな宣戦布告されて簡単に会わすと思ってるのかい?」

    と笑顔を向けると吉田も口角を上げ笑みを浮かべる。

    「三津さんを迎えに行けばいいのですね?分かりました。」

    どこからともなく現れた入江がでは私がと出て行こうとする。

    「待ちなさい。どこから沸いて出た。君も駄目だ。伊藤君だ伊藤君を呼びなさい。伊藤君!!!」

  • 静まり返る部屋。

    静まり返る部屋。その静寂を切り裂いたのが,

    「ごめんくださいっ!」

    と言う大声と草履を脱ぎ捨て上がり込んで来る足音で,すでに勢い良く開かれた障子から飛び込んで来た。

    「あぁ……三津さん……申し訳ございませんでしたぁっ!」

    来るやいなや畳に額を擦りつけ謝罪した。

    「伊藤さんお久しぶりです,ご無事でなによりです。」 【生髮方法】生髮洗頭水效用&評價! @ 香港脫髮研社 :: 痞客邦 ::

    そんな仰々しく謝らなくてもと三津は笑った。三津は笑ってくれてもこっちは笑ってくれない。

    「本当に雰囲気ぶち壊してくれるよね俊輔。」

    鼻をすすりながらゆっくりと三津から身をはがして伊藤を一瞥した。

    「えっ吉田さん泣いてるんですか……?」

    嘘でしょ?と呟いて吉田を目に映す。

    「どれだけ後悔したか。相討ち覚悟で土方の腕を斬り落としてやれば良かったって……。お前を身代わりにするなんて俺は馬鹿だ。」

    吉田はまた三津を腕の中に引きずり込んだ。それを聞いて三津は首を横に振る。

    「その相討ちが見たくなくて土方さんに飛び付いた馬鹿は私なんで吉田さんは逃げてくれて正解なんです。

    何とか帰って来れました。だからもう自分を責めないでください。生きててくれてありがとうございます。」

    三津は腕の中で身を捩り吉田を見上げて微笑んだ。

    死ななくて良かった。こうして温もりを感じてこの目に映す事が出来て。本当に良かった。

    ……桂さん。やっぱり三津は私にください。」

    もう離せないときつく抱き締めた。

    「断る。さぁ三津,診察は済んだから着替えておいで。そんな格好のまま抱きしめられてるんじゃない。」

    吉田から三津を引き剥がし,着物と帯を持たせてあっちへ行きなさいと隣の部屋に押し込んで襖を閉めた。

    「玄瑞,三津の具合は?」

    「あぁ……もうだいぶ良くなってる。」

    久坂がちらっと桂に視線を送れば桂は小さく首を振った。左手の事には触れるなと。

    「そうか……。」

    ようやく落ち着いて小さく息を吐いた。

    念願の三津に会えたのに吉田は全く笑わない。

    「そうだ……乃美さんが桂さんはどこ行ったんだって探してましたよ。俊輔と一緒で空気読めないおっさんですよね。」

    笑えはしないが毒づく事は出来るらしい。

    『お楽しみはお預けか……。』「藩邸に戻られるんですか?」

    着付けを終えた三津が私は一人で留守番?と少し不安げに居間に出て来た。

    「いきなり一人にしてすまないね。ちゃんと帰って来るから知らない人を中に入れちゃいけないよ。あと迷子になるから出歩くのも駄目だからね。もし土方君なんかに見つかったら大変だしね。」

    いい子で待っててと頭を撫でた。

    あまりの過保護っぷりに久坂は呆れ返った。

    『子供に言い聞かせてるんじゃあるまいし……。ほら見ろ流石に彼女も顔引き攣ってるじゃないか。』

    「ちゃんと大人しくしてますから。」

    皆さんこそ気を付けてと玄関でみんなを見送った。

    『みんなで歩いてる方が目立って危ないと思うけど……

    おじちゃんとおばちゃんもホンマに大丈夫かなぁ……。』

    しばらくの間玄関に佇んで言い知れぬ不安と戦った。

    全速力で屯所に戻った斎藤は勢いそのままに土方の部屋に駆け込んだ。

    「どうした。」

    いつもの斎藤らしからぬ行動に胸騒ぎを覚えた。まさかとは思うが報告を待つ。

    斎藤は息も絶え絶えに,

    「申し訳ございません。三津を……見失いました……。」

    畳に伏せたまま大きく肩で息をした。呼吸も整わない。喉もからから。

    「あ?お前が見失うとは只事じゃねぇだろ。何があった。」

    その言葉を貰ってゆっくりと顔を上げた。

    「子供達と寺で遊んだ帰り道,何処からともなく三津の背後に男が現れ気付けばもう姿はなく……。逸れた脇道に飛び込み後を追ったのですが見つからず,甘味屋にも行ったのですが帰っておりませんでした。」